アソビザでは、バンダイナムコ研究所が生み出した新しいエンターテイメント体験をどんどんご紹介していきます!
今回お話を伺ったのは、バンダイナムコ研究所の技術開発本部にて、先端技術を活用したゲームの開発に携わる石井源久(いしい・もとなが)さん。
実は石井さん、図形科学の分野で博士号を取得していて、趣味はパズル制作。といっても、パズル制作にかける情熱はとても趣味の範囲内には収まりきらず、商品化に近いところまでいくこともあったとか。
今回はそんな石井さんの手がけるパズルに注目し、パズルに対する思いや考え方を伺ってきました!
特集

"美しさと意外性" 石井さんのパズル制作にかける思い
ゲームに取り入れる先端技術
パズルのご紹介の前に、まずは、石井さんが普段どのようなお仕事をされているか教えてください。
「バンダイナムコ研究所の先端技術部に所属しています。先端技術をゲームに取り入れるという仕事ですね。具体的には、プロジェクションマッピングを取り入れたゲームの開発や、ドームスクリーン関連のゲーム開発に携わってきました。2018年、立川市にオープンした『屋内・冒険の島 ドコドコ』というデジタルプレイグラウンドがあるのですが、そのプロジェクションマッピングの開発も担当しました」
デジタルとアナログの遊びが融合した面白い施設ですね!
ちなみに石井さんは図形科学の分野で博士号をお持ちとのことですが、それはどういった学問なのかも教えていただけますか。
「製図と形の学問です。多面体や4次元以上の多面体に相当する図形に対し、面白い性質や特徴を探ったりします。多面体って、うまく組み合わせると意外性が出てくるんですよ。まさかこんなことが、といった感じでうまく箱の中に入ったり。そういうパズル的な要素が面白くて、深めてみたいなと」
なるほど、それは石井さんのパズル制作に大きく関係してそうですね。では実際にパズル制作を行い始めたのはいつからなのですか?
「2006年くらいからですかね。1999年に当時のナムコに入社したときは、やっぱりアミューズメント業界ということでガンプラ等のプラモデルに興味をもってました。ただ、基本的には素組みですね。
それはそれですごく楽しかったし、今でも時々作ったりもするんですが、改造したくなってきたときに”どうも自分は自由曲面というかアートっぽい曲面は苦手で、そこを自作しようという気が起きず、やっぱり平面とか球面とかそういう数学的に美しいところのほうが好きだし得意だ”ってことがわかりました」
「もともと多面体の組み合わせみたいなものが好きだったというのもあるし、パズルの本を読んだりして、その当時マイブームみたいなものがあったんです。それで、2006年のタイミングで実際にパズルを作ろうと。パズルに限らず、とにかく図形っぽい玩具を作ろうと思いましたね」
着想のきっかけは意外性と美しさ
石井さんがパズルを作っていくときに考え方のくせであったり、着想のきっかけになるのはどんなことなのでしょうか。
「思いつくきっかけはいろいろありますが、アイデアのもととなるものは、“意外性”です。意外性のひとつのヒントとして、『斜めに切る』ということがあります」
斜めに切ると想像がつかない、想像がつきにくいことが起きるということですか。
「そうです。例えば、立方体を側面に並行に切ったら、どんな形になるか想像がつくじゃないですか。でも、斜めに切る、さらには2つ以上の方向で斜めになるように切ると、直感ではその後の形がわからなくなってくる。そこに意外性が生まれるんです。」
確かに考えてもパッと思い浮かびません(笑)ご持参いただいたパズルを見ていくと石井さんのパズルは立体物が多いようですが、これは大学院で研究されていた多面体へのこだわりによるものですか。
「そうですね。まずは立体図形であること。一時期は立方体にこだわっていたこともありましたが、もう少し範囲を広げて、正多面体など対称性の高い図形をモチーフにした美しい形を作りたいというこだわりはあります。理想としては、美しい形から美しい形に変形させたい。しかし思っていたように行かないことも多いのです。それらは今後ご紹介していきたいと思っていますが、変形状態の少なくともどちらかは美しい形にしたいと思っています」
理想の形を追い求めて!
美しい形を作るということが大きなテーマなのですね。パズル試作では3Dプリンターも活用されてるとお聞きしましたが、試作制作はどのように発展していったのでしょうか。
「最初は紙で作っていました。紙は設備面では一番お手軽ですが、崩れやすかったり壊れやすかったりと、あんまり乱暴には扱えない。そこで、プラモデル制作の技術を取り入れて、プラ板を切ったりパテを捏ねたりして作るようになりました。その後積木等の制作方法を勉強し木工での試作も行うようになりました。」
理想の形を作るために、紙からプラ、木工、そして今は3Dプリンターも活用されていると言う流れなのですね。
「はい、プラ、木工と理想の形には近づいていきましたが、1つ作るだけで1ヶ月ほどかかっていました。ようやく完成して遊んでみると”面白くない”と分かることも多く、手間を考えると改良する気も失せてしまいます。3Dプリンターを使うことによって、試作と改良のスピードが上がり、複雑な形状も表現することが出来るようになりました」
パズルへの探求は終わらない
ここに至るまで様々な試行錯誤があったのですね。そんな発展を遂げてきたパズル制作ですが、今後どんなことをやっていきたいか、パズルを通してどういうことを表現していきたいか、教えていただけますか。
「趣味でやっているとはいえ、試作したパズルを見せると、ぜひ製品化してほしいというお声をいただきます。世界的にみたらごく一部かもしれないけど、欲しい人がいらっしゃるのであれば、なんとかして作って届けなければいけない。なにか量産できるチャンスが欲しいと思っています」
製品化を望む声はたくさんあると思います。石井さんご自身は、今後こんなパズルを作りたい、といった野望はありますか。
「先端技術部にいながらパズルを作るのであれば、昔はできなかったけど今のテクノロジーが追い付いてきてできるようになったことを、パズルにも何か取り入れなければと思っています。まだまだ壁はありますが、プロジェクションマッピングや光の要素も入れてやってみたいです」
石井さんにとってパズル制作は、まさにライフワークのようなものなのですね。今後asobizaでは石井さんのパズル制作をアソビノタネとしてご紹介していきます!石井さん、ありがとうございました!
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